第16話 やっぱゲームだし、楽しまなくちゃな? (1/2)

路地裏は街灯が少なく薄暗い。だからか何か良からぬことを考える輩もいるようで、そいつらに見られているような感覚がする。【気配感知】でより敏感になっていることも関係があるかもしれない。

「せめて日中にすればよかったかな……」

リアルで平和に暮らしているとなかなか味わえないこの薄気味悪さ。背筋が凍るとはこんな感じなのか。 しかし一度入ると決めてしまったし、恐怖心のほかに好奇心も同じくらいあるため、引き下がるという発想はない。 一歩一歩警戒しながら歩いていく。

「うーん……人はいるけど」

数分歩いていると、雰囲気にも慣れてくる。人の気配はかなりするけど、襲ってくるとかそういう感じじゃなさそう。 気の向くままに路地裏を歩いていく。途中で視界がはっきりとして、【夜目】という技能を手に入れた。夜の時に視界を確保しやすくなるらしい。

「あとちょっとして何もなかったら引き返そうか」

あの大通りからはかなり離れてきている。ここまで深く来て何もないなら、人がたくさんいるところで探したほうがよさそうだ。

「……うん、何もなし。帰ろっと」「誰か!」

結局何も見つからず、諦めて戻ろうとしたその時。どこかから女性の悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。

「今のは!?」

【空間記憶】を頼りに女性の居場所を考える。聞こえてきた方向からして一度は通ったことがある場所のはずだ。

「多分この辺……いた!」

走りつつ状況を把握。路上に座り込んで壁に追いやられている人が一人と、大柄な人が一人。その大柄な人の両脇に人影が二つあって、三人で一人子取り囲んでいる形。 【夜目】のおかげでだんだんと状況が読めてくる。座り込んでいるのが女性で、そのほかは男。何か事情があるのかもしれないけど、一応首突っ込んでみる。だってレアイベントかもしれないし。

「どうしたんですか?」「あん?」

女性と男たちの間に割って入る。大柄な男が睨みつけてくるが、逆にその目を睨み返す。

「なんだテメェ? 邪魔すると痛い目見るぜ?」「ということはあなたたちのほうが襲ってる側だな?」「違うな。襲ってるんじゃない、一緒に遊ぼうと誘っているんだ。だから失せな」「らしいけど。本当に?」「ち、違います……!」

違うらしい。まぁ、状況的に悪いのは男たちらしいし、どうにか助けてみますか。

「彼女は違うって言ってるけど」「うるせぇ! 雑魚は引っ込んでればいいんだよぉ!」「ッちょいきなり……!?」

拳を振りかぶったかと思うと、素早く殴りつけてくる大柄な男。見た目に反して意外と素早い。 男の拳をぎりぎり回避し、お返しとばかりに腹めがけて一発繰り出す。当たった。が……

「へっ、そんなへなちょこパンチじゃマッサージにすらならねぇ」