第15話 レア技能会得の第一歩 (1/2)

夜食の時間だから、と朱音はログアウトした。夕飯ではなく夜食だそうだ。

「時間的にはもういい時間なんだよな」

日付が変わるか変わらないかくらいのはず。朱音がいなくなって一区切りついたし、俺も落ちようかな? けれどまだやりたいという気持ちもある。やり方を教えてもらったのもあるが、今日だけで5つも技能を会得できた。もっと会得したい気持ちが強い。

「どうせ明日は何もないんだし、とことんやってみるか」

朱音がいなくなったことで、俺の周囲にモンスターが近づいてきていることが【気配感知】によってわかる。 技能【気配感知】──自身の周囲の気配を感知する技能。感知するだけで数や種類までは判別できない。数はある程度把握できる。 目を瞑った俺の周りを朱音が動き回り、その動きに意識を集中させることで会得できた技能だ。

「戦闘で会得できる技能もあるだろうし、試しつつやっていこう」

技能【空間記憶】──その名の通り空間を記憶できる。目視で確認した場所しか記憶できない。 目を瞑って動き回ることで会得した技能。この技能のおかげで、モンスターに囲まれたりしても逃げ場を見つけやすくなる。

「街に戻りつつ技能会得を目指すことにしよう」

俺でも戦えるとはいえ、いままで戦ってきた相手の中で一番強いことは確かだ。ずっとここに籠っているといづれやられてしまう。

「たしかあっちだったよな……」

なにせ深い森の中だ。どっちから来たかなんてわからなくなってしまう。しかしここで意外なことに気付く。

「結構覚えてる……」

もしかしたら【空間記憶】のおかげなのかもしれないが、会得前のことも記憶対象なのか? だがそれ以外に考えられない。 見覚えのある所を通り、時折襲ってくるモンスターと対峙しながらも、着々と街に近づいていく。 あれほど太かった幹もだんだんと細くなり、生い茂っていた草花もそれほど邪魔に感じない程度に少なくなっていく。 そしてあまり時間をかけずに街までたどり着いた。

「ついたー」