第73話 神楽流道場 (2/2)

「ありゃ、いないね」

前回とおなじく道場の方に入ったが、そっちには誰もおらず暗い状態だった。 ならば隣りにある古民家の方だと、そっちへ向かう。 果たして、そこに二人はいた。

「おや、お早いお帰りで……」

俺たちが玄関で声をかけると、奥から二人が出てきた。 その日のうちに帰ってきたことによっぽど驚いたのだろう。細身の男が若干目を大きくして声をかけてくれた。

「アーミーアント倒してきましたー」「どれどれ……はい、確かにアーミーアントの大顎ですね。数も申し分ない……」

朱音が取り出したのは一つだが、おそらく俺たちのインベントリを見たのだろう。この程度は予想通りだったのか数に驚く様子は見られなかった。

「こちらへどうぞ……」

細身の男に案内され、古民家の中へと入る。通されたのは応接室だ。 木製の高級感あふれる長机がどっしりと部屋の中央に構え、長辺に2つずつ座布団が置かれている。<ruby><rb>床</rb><rp>(</rp><rt>とこ</rt><rp>)</rp></ruby>には掛け軸もかけられ、まさしく和室と言われて想像するような造り。 促され、座布団の上に座る。あ、マナーとかはよくわからないのであしからず。

「それでは」「うむ」

全員が座ったことを確認すると、これまで無言を貫いていたガタイのいい男が口を開く。

「儂はエンゾウ。この道場で師範として、門下生らに儂らの術を教えておる」「僕はコウスケ。師範としてエンゾウとともにここで教えています……」

ガタイがいい方がエンゾウで、細いほうがコウスケか。うん、覚えた。

「神楽流体術師範エンゾウ。試験を突破し、一つの苦難を乗り越えたお主らの入門を許可しよう」「おなじく神楽流体術師範コウスケ。お二人の入門を認めます」

〈神楽流道場に入門しました〉

二人からの言葉を受けて、正式に門下生となれたようだ。 これからどんな修練が必要なのかは分からないが、諦めることなく会得できるようにしないとね。