第53話 精霊化 (1/2)

コンパスで方向を確認しながら、ゆっくりと精霊の森を目指す。イグニスたち精霊ならコンパスがなくてもわかるんじゃないかと思ったけど、どうやらそう都合よくはないみたい。自分は帰れるけど、自分以外も一緒に買えることはできないんだとか。

「マスターの場合すでに行ってるし、フィリアとも面識があるから、場所さえ合っていればすぐに入れるはずよ」「そうなの?」「リーリーは導きの精霊、一度導いた人は忘れないわ」

道すがら暇つぶし相手になってくれるのはアニマだ。ユートピアを始めてそれなりに経ってるけど、俺はいまだにソロプレイヤー。そろそろ仲間が欲しいと思わなくもない。アニマがいるし、話せないけどイグニスたちもいるから、別に不自由はないんだけどね。

「ここらへん?」

少し歩くだけでコンパスが示す方向が変わる。目的地が近いようだ。

[ブルーだ! ブルーだ!][おかえり! おかり!]

ブラブラ彷徨っていると、聞こえてくるのは聞き覚えのある声。リーリーだ。アニマが言ったように、俺のことを覚えてくれていたらしい。

「リーリー久しぶり。フィリアのところに行きたいんだけど」[お安い御用! ごよー!][こっち! こっちだよ!]

声に導かれるままに進んでいく。霧が立ち込めてきて、歩くほどに濃くなっていく。そしてついには数センチ先も見えなくなった。

[ついた! とーちゃく!][フィリア! フィリア!]

リーリーの声と、霧が晴れていくのは同時だった。 視界が確保されて最初に飛び込んでくるのは、巨大な樹木。間違いなくフィリアがいる巨木だ。

「せっかくだしみんなでいこう。出ておいで」

イグニス、アクア、テラがそれぞれの定位置に出てくる。アニマは最近飛ぶほうが多くなっているので、テラは元の定位置である頭の上だ。 巨木の中に入り、何回見ても驚く内装にやっぱり驚き、ハイテクすぎるエレベーターに乗り込む。リーリーとはここでお別れだった。 静かに、しかして素早く上昇していくエレベーターは、数秒程度でフィリアがいる場所まで連れて行ってくれた。

「ブルーさん?」

エレベーターのドアが開くと、そこには相変わらず大きなものをお持ちのフィリアが、玉座に座っていた。突然の訪問に驚いた様子。玉座から立ち上がりこちらに歩いてくる。 俺もエレベーターから降りて、フィリアのほうへ向かう。

「お久しぶり……ってほどでもないですね」「まさかこんなに早く再開できるなんて思ってもみませんでした」「実はフィリアにお願いがあって……」「はい、なんなりと」