第38話 ただのマッチポンプ (2/2)

俺がるなさんに教えてもらったときは、精霊の森の情報と、「そのときになればわかる」というヒントがあった。あれ、これ朱音が持ってる情報となんら変わらなくね? だけど、ここまで朱音が精霊の森に行きたいというのであれば、もう少し助けてあげてもいいのかもしれない。

「実は、精霊の森がどこにあるか、方向がわかるアイテムがある」「ほんとに!?」「ただまだ一回も使ったことないから、どんな感じのアイテムなのかはわからない」「問題ないね」「じゃあ今日インしたら連絡する」「絶対だよ!」

やっと拘束が解かれ、晴れて俺は自由の身になった。そして急いで購買へ向かう。まだギリギリ何か残ってるかもしれない……!

「そんな……うそ、だろ?」

購買に着いた俺の目に移ったのは、綺麗になった商品棚。誰かが好き嫌いすることなく、すべての商品がなくなっていた。俺のお昼……。 仕方がないので、とぼとぼと教室へ戻る。お昼がないと思うと、余計にお腹が空いてくる。午後乗り切れるかな……てか次体育じゃん。死んだ。

「あれ、アオお昼は?」「誰かのせいでなし」

教室へ戻ると、友達と楽しそうにお昼を食べていた朱音が話しかけてきた。いいな、朱音の弁当。……いや豪華すぎない? サイズは普通だけど中身は見ただけで高級食材だとわかるんだけど。 俺は空腹に耐えながら机に突っ伏すしかできない。少しでも体力温存しないと。

「ほら、あーん」「んあ?」

近くで朱音の声が聞こえたと思ったら、目の前にはおいしそうなご飯。顔を上げると、そこには朱音が立っていた。

「多分何も買えなかったんでしょ? 私が悪いし、お弁当半分こしよ?」「いいの……?」「もち!」「ありがとう」

朱音が女神に見える……が、ただのマッチポンプだろこれ。 だけどお腹が減ってるのは事実なので、朱音に弁当を分けてもらい、満腹にはならないけど、空腹ではないくらいには回復できた。 なお、箸を持っていないので、必然的に朱音に食べさせてもらうか、朱音の箸を使うことになる。その時の様々な圧、主に殺気には気付かないふりをするしかなかった。高校生が出していい殺気じゃないって。