第27話 断トツ (1/2)

「つらい……」

無事に精霊の街に辿り着いたはいいが、如何せん起伏が激しすぎる。傍目から見た時はそうでもなさそうだったのに、実際に歩いてみるとかなり大変だ。 空を飛ぶ精霊がいれば、普通に歩く精霊もいるし、地中に潜る精霊もいて、個性豊かなことが見て取れるが、共通して身体能力が高いらしい。もしくは物理法則が仕事をしていないか。ぴょんぴょんと軽々しく歩く精霊の姿が見える。

「人間の俺がいても全然騒がないんだ」

驚いたのが、精霊はだれ一人として俺に興味を持たないこと。普通人間みたいな精霊以外の生物が現れたらなにかしら騒がれると思ったんだけど。逃げる様子もないし。

[ブルー! ブルー!][お呼び! お呼び!][女王! 女王!]

遠くから何やら小さい光が飛んでくる……と思った次の瞬間には目の前にいた。驚きはしたけど、その姿にあっけを取られてしまう。 精霊というより妖精だ。手のひらに乗りそうなほど小さな体に、身長ほどもある半透明の羽がついている。その精霊は聞いたことがある声と喋り方で言う。

[[[ついてくるー!]]]

ここに来るときに聞こえた声の持ち主。ここにきてやっとその姿を見ることができたが、数秒後には飛んで行ってしまった。多分女王か誰かが俺を呼んでるって言ってたような……

[早く!][おいてっちゃうー?][おこられるー!]

立ちすくんでいると、さっきの精霊三人が戻ってきて、急かすように背中に体当たりしてくる。

「行くしかないか」

もし本当に女王に会えるなら、精霊の素材が手に入るかもしれない。何も手立てがない現状では、この子たちについていくほかにいい案を思いつけない。 俺は小さな精霊たちに先導され、女王とやらのもとへ向かった。

「すっご……」

思わず呟いてしまう。それも仕方ない。なんせ俺の目の前には巨大な大木が鎮座していたのだから。 ひと際目立つこの巨木が突然現れた。それまでそこには何もなかったのに、歩いていると急に。

[こっちー! こっち!]