第1話 へんじがない、ただのしかばねのようだ。 (1/2)

「まじか……」

空は黒く、激しく雨が降っている。少しずつ暖かくなってはきているが、それでも雨が降ると肌寒く感じる。学校から帰る時は降ってなかったのに。 こんな天気だからか店は閑散としていて、レジで突っ立っているだけ。ぼんやりとガラス製の自動ドア越しに外を眺める。 そうやって時間を潰していると上がりの時間になった。着替えるために更衣室へ。

「持っててよかった折り畳みっと」

天気予報を見る癖がないので、昔から濡れて帰ることが多かったため折り畳み傘を鞄に忍ばせてある。

「お先でーす」

店長に挨拶をして、バイト先であるコンビニから出る。眺めていたのでわかったが、さっきからこの雨は勢いを増してきている。寄り道せずに早く帰ろう。 コンビニから家まで徒歩で15分程度。いつもは自転車だからそんなに時間はかからない。 しかし歩いて帰ることで、いつもは気付かないことに気付けたりする。例えばそう。

「あれ……?」

びしょ濡れで道路わきに座り込むスーツ姿の女の人とか。この辺は住宅街なので道幅が狭く車があまり通らない。だから轢かれたりする心配はない。でも電柱の近くに座るのはちょっと……犬飼ってる人それなりにいるし。

「あのー……」

絶対何か訳ありなんだろうが、だからと言ってこんな大雨の中放置するのは良心が痛む。もしこれが晴れていたなら声掛けはしなかっただろうが、今は雨中。勇気を出して声をかけてみる。

「……」

へんじがない、ただのしかばねのようだ。

「大丈夫ですか?」「……」

へんじがない、ただの──おや?

「えっと」