第37話 (1/2)

何度も消しゴムで消しては書いてを繰り返しているせいで、ルーズリーフはヨレてきてしまっている。

必死にペンを走らせるがいまいち納得出来ずに、ここ何日も頭を悩ませているのだ。

あの曲を聞いて思い浮かんだのは切なさで、片想いの失恋ソングを描こうと思ったが、上手く描くことが出来ずにいた。

そもそも作詞経験なんてない素人は上手くできなくて当然なのだろうが、少しでも彼女の曲に合う歌詞を描こうと頑張りたくなってしまう。

一度頭の中を整理しようと、録音していたリアが弾いたギターの音色を再生していれば、一階からインターホンの音が聞こえてくる。

「なつめ、リアちゃん来てくれたわよ」

母親の呼ぶ声が聞こえて、慌てて時間を確認する。 気づけば待ち合わせ時刻を迎えていて、大慌てで準備をしてから階段を駆け降りていた。

「ごめん、歌詞書いてて時間見てなかった……」 「全然平気。行こっか」

玄関の扉を開けば、夏らしくモワッとした熱気が押し寄せてくる。 今年は猛暑らしく、暑さに負けないようにセミも一際大きな声で鳴いているような気がした。

暑さを和らげようと、手で風を仰ぎながら太陽に照らされた道を歩く。

「作詞中々上手くいかなくてさあ」 「ゆっくりでいいのに」 「せっかくだから早く動画にしてアップしたいじゃん。雅の曲、めちゃくちゃ良いから」 「なつめちゃんは本当に私の曲が好きだね」 「好きだよ、歌声も雅が作る曲も」

この世で一番、彼女の歌声の虜になっている自信がある。 繊細で綺麗な彼女が紡ぎ出す言葉を、軽い気持ちで決めたくないのだ。

二人で駅に着いて、改札を抜けてからピタリと立ち止まる。 遊ぶ約束はしていたが、どこへ行くかは何も決めていなかったのだ。

「今日どこ行く?」 「プールは?」 「水着持ってきてないし」 「じゃあ、水族館」 「いいよ」

30分ほど電車に揺られてから、ペンギンの群れが可愛くて有名な水族館に到着する。 当然のように二人の手は恋人繋ぎで握り合っていて、どこか不思議な感じがした。

嫌じゃないためされるがままだが、今年17歳になる女子高校生2人が手を繋いで歩くものなのだろうか。

ガラス越しに水中を泳ぐ魚を眺めながら、思い出したようにリアが言葉を口にする。