第36話 (1/2)

クーラーの効いた室内で、ふかふかのベッドの上に横たわる。 数ヶ月前に購入したばかりだというベッドはスプリングもしっかりとしていて、寝心地がとても良いのだ。

「なつめちゃん寝るの?」 「んー……」

ケーキを食べたおかげで食欲が満たされ、代わりに睡眠欲が込み上げてくる。

夏休みに入ってからは、ほぼ毎日互いの家に入り浸る日々を過ごしていた。 お互い徒歩で行ける距離なため、暇さえあれば転がり込んでしまっている。

大体リアはギターを弾いていて、なつめはその歌声をBGMに本を読むことが多かった。

こんなにも綺麗な歌声をさらりと聞き流してしまうなんて、何とも贅沢だ。

「ちょっと寝ようかな…」 「そっか。曲出来たら聞いてもらおうと思ったのに」

襲って来ていた眠気が一気に吹き飛んで、慌ててベッドから起き上がる。 今までカバー曲しか聴いたことがないため、オリジナル曲を作っていたことすら知らなかったのだ。

「雅、作曲してるの!?」 「まあ…昔から作ってはいる」 「聞きたい、聞かせてよ」

お願いと強請れば、彼女が大きく頷いて見せる。 綺麗な左手が弦を押さえて、もう片方の手で器用に弾き始めた。

ゆったりとしたバラード調で、彼女の心の中で生まれた曲が音になって届いてくる。

夏の爽やかさを滲ませながら、どこか切ないような気もする。 秋の訪れを感じつつ、まだ僅かに夏の香りも残っているような、夕暮れ時に聴きたくなるような曲調だった。