第24話 (1/2)

ポツポツと雨音が打ち付けられる音をBGMに、シャープペンシルを動かしながら目の前の課題と向き合う。

宿泊予定の温泉旅館の大広間に集められた生徒一同は、ジャージ姿で勉強させられているのだ。

林間教室当日。 晴れであれば地獄の登山をする予定であったが、幸か不幸か土砂降りになってしまったため、こうして参考書と向き合う羽目になったのだ。

あの登山を経験せずに済むなんて、過去の卒業生が聞いたら泣いて羨ましがるだろうと、部活に所属する生徒がポツリと呟いていた。

「……山登りも嫌だけど勉強はもっと嫌なんですけど…」 「そこ、喋らない!」 「すみません……」

夜ご飯は半合炊飯とカレー作りの予定だったが、土砂降りの雨なため勿論中止。   夜は天体観測の予定だったが、この雨だとそれも無理だろう。

虫が苦手なため、山に入るよりは勉強をしていた方がマシだと心の中でこっそりとつぶやく。

「……えー、何もわかんない…」

勉強が苦手な雅リアは苦戦しているようで、先ほどからちっともペンが進んでいない。

宿泊班と同じメンバーが8人で1つの長机を囲んでいるため、自然と彼女の姿が視界に入ってくる。

どれだけ注意されても相変わらず派手なピンク髪を貫いているようで、最近は教師陣も諦めた様子だった。

「終わった順で自由時間だからな」 「自由時間って何してもいいんですか?」 「迷惑が掛からない範囲でなら」

自由時間という言葉に、皆のやる気が俄然として上がったようだった。

カリカリとペンを走らせる音が先程に比べて大きくなり、暫くすれば課題を終わらせた生徒が次々と現れ始める。

1時間もすれば人の数はまばらになり始め、なつめの所属する班は、残りはリアを残すだけとなっていた。  「……王子、勉強得意じゃん」 「班長だから、皆んなが終わるの待つつもりだったの」

それらしいことを口走りながら、本当は無理矢理リアと話がしたいだけだ。

自由時間になっても友達がいないなつめはどうせ一人で過ごすのだからと、優等生のフリをして彼女の勉強を手伝う。

教師陣も早く生徒のお守りから解放されたいのか、私語を話しても怒られなくなっていた。

「どこが分からないの?」 「……ここ」

渡された数学の参考書に一度目を通してから、丁寧に説明をしていく。

ルーズリーフに要点をまとめながら説明するなつめの言葉を、リアは熱心に聞いてくれていた。

あの日、なつめが勝手に彼女のスマホを弄らなければ、こんなふうに勉強会を一緒にしていたのだろうか。