第27話 未来への分岐点 side 万里 愛衣 (1/2)

大学を出てすぐに養護教諭になった私を採用してくれたのが、 巷では『鉛筆が握れれば合格出来る』とまで言われる奇人変人の巣窟、<ruby><rb>丸井百合ヶ咲女学園</rb><rp>(</rp><rt>まるじょ</rt><rp>)</rp></ruby>だった。 1、2ヶ月ほど経ち自由な校風にも慣れ始めた頃、控えめなノックが保健室の扉を叩く。

「どうぞー?」

この学園で保健室に入るのにノックをする生徒が残っていた事に驚く。

「し、失礼します」

「どうぞ、ここに座って」

入って来たのは小柄で眼鏡を掛けた生徒だった。 雰囲気的に急を要する案件では無さそうだ。 私の記憶が正しければ、確かこの生徒は……生徒会長を務めていた子だったかしら。 道理で真面目な訳だ。

「まずは学年と名前を教えてくれるかな?」

「は、はい……!」

緊張しながら私の顔を覗き込む彼女は、

「――3-Aの百合聡美です」

小さく震えながら、そう名乗った。

***

「m class="emphasisDots">聡美ちゃんね。要件は何かなー?」

「は、はい……!」

そわそわ、キョロキョロとする可愛らしい彼女はまるで小動物のようだった。 これは、あれかなー。うん。

(――なんとかして触診に持ち込みたい!!)

「顔が赤いね。もしかして熱があるのかな? ちょっと上着のボタン外して貰えるー?」

「ち、違います! 今日は万里先生に話が合って……!!」

「ほうほう。じゃあ、あっちのベッドの方行こうかー」

「ベッド……? カーテンを掛けて話すという事でしょうか……?」

「ん? あぁ。そうそうそんな感じ、そんな感じ」

何を勘違いしたのかベッドへの誘いをOKされる。 移動した私は自然な流れで彼女をベッドの上に座るように促し、彼女はそれに従う。 私が言うのも何だがこの子はガードが薄すぎる。悪い人間に玩具にされないかが心配だ。

「それで私に話って?」

パイプ椅子に腰を掛けた私は彼女と向き合う。

「ば、万里先生が……その、生徒達に……せっ、セク、ハラを……」

「……あーぁ。そういうね」

私は保健室に来た生徒達を度々m class="emphasisDots">頂いていた。 その噂が大分ソフトな形で彼女の耳に入ったのだろう。

「君はその噂の審議を確かめに魔王の根城に単身で乗り込んだと?」

「は、はい……」

うーん、この子はもしかして私を誘ってるいるのだろうか? 逆にここまで勇気を出して来たのに押し倒さないのは失礼に当たるのでは? 義侠心に駆られた私はさっそく行動に移そうと足に力を込める。

「……わ、私。万里先生はそんな先生じゃないってみんなに伝えたくて……どうすればいいか分からなくて……」