第36話 ふっ、誰に言っているのかしら? (1/2)

うぉぉぉおおおおお!と何やら気合を入れて帰っていく朱音の後姿を見送り、俺も帰路に就く。早くユートピアにログインして、るなさんがいたら武器を造ってもらいたいけど、生憎と今日はバイトがある。 家に着いた俺は制服から着替えてバイト先のコンビニへ。

「あっつ」

数日前まで暖かい程度だったのに、今は暑い。じっとしているなら平気でも、少し動けばすぐに汗が出る。 そんな中自転車を漕いでバイト先に到着した。

バイト中に特筆すべきことは起こらず、淡々と時間が過ぎていった。今日は比較的暇な日だった。 時間で上がり、ゆっくりと帰り支度をする。雨が降っているわけでもないし、家で誰かが待っているわけでもない。 自転車を漕ぎながら、帰ってなにをするか考える。と言っても、ユートピアにログインすることは前提だ。 るなさんがいたら武器を頼んで、いなかったら……竜の情報でも探してみよう。

「ただいま~」

誰もいないけど、なんとなく口に出していってしまう。「おかえり」の言葉が欲しいわけじゃなく、たぶん家に帰ってきたと実感するから。 コンビニでもらってきた弁当を温め、スマホで動画を流し見しながら食べる。テレビは持っていないけど、スマホがあればたいてい何でもできるから問題ない。 食べ終われば後は風呂……なんだけど、今日はいいや。明日の朝に入ろう。

「るなさんは……」

ハードのほうでフレンドを確認する。お、オンラインだ。しかもユートピアをやっているみたい。 タイミングがいいので早くログインする。るなさんは大人で、仕事がある中でユートピアをやっているはずなので、このタイミングを逃すと次にいつ会えるかわからない。

「お店は……あっちのほうか」

昨日急いで帰ってきて、街に着いたらすぐにログアウトしたから、現在地がよくわかっていない。マップで場所を確認して、るなさんのお店へ向かう。 るなさんのお店は相変わらず閑散としていた。

「いらっしゃい。あら、ブルーくんじゃない」「こんばんは」「ここに来たってことは……そう言うことよね」「まぁ、はい。ちょっと違いますけど」「周りにいるその子たちね。予想はしていたけど、全員連れてくるとは思わなかったわ。これは予想以上の収穫ね」「収穫?」「ああ、気にしないでちょうだい。広告塔として、という意味だから」「それはちょっと気にしたい」