第42話 (1/2)

夏ともなれば、夕暮れのオレンジ色の光が辺りを照らす時間帯になってもまだまだ暑い。

都内でも有名な自然あふれる公園は、家族連れや友達同士、カップルと沢山の人で賑わっていた。

通りに椅子を置いて、リアが持っていたギターケースを降ろす。

「アンプは繋がないの?」 「アコギにしたんだ。うるさいって怒られても嫌だし。私声だけはデカいから」 「声量あるって良いなよ」

二人でくすくす笑いながら準備をしていく。 休日ということもあって、準備段階からチラチラと視線を向けられていた。

ピンク髪の美少女がどんな歌を歌うのか、気になっているのかもしれない。

「空き缶は置く?」 「ベタだからやめとくよ。けど、これは飾っとく」

そう言いながら側に置いたのは、ミニ看板だった。  ハルフキリアという名前と共に、SNSと動画サイトのアカウントがチョークで記載されている。

いよいよ初めての路上ライブが始まるのだ。

「一曲目は何が良いかな」 「……二人が初めて作った曲にしよう」

提案して見せれば、リアが嬉しそうに笑みを浮かべる。

「……じゃあ、聴いててね」

ギターを掻き鳴らせば、通行人がこちらに視線を寄越す。 それを不敵な笑みで返してから、リアが口を開いた。

マイクは勿論アンプだって繋いでいないため、遠くまでは届かないけれど、側にいた人は彼女の歌に驚いたように足を止める。

ずっと好きで堪らなかった、リアの歌声。 一人でも多くの人に聞いて欲しいというなつめの願いが、また一歩前進したような気がした。

「あの子上手だね…」 「ていうかあれ、聴いたことある気がする……」

ひとり、またひとりと足を止めて、少しずつ人だかりが出来てくる。 彼女と顔を見合わせて、嬉しくて笑みを浮かべてしまっていた。

「声綺麗」 「てか、めっちゃ可愛くない?」 「しかもすごい上手…」

若者が多く集まる公園ということもあり、次々と人が集まってしまう。