第34話 (1/2)

見慣れた空き教室の窓から、下校する生徒たちを眺めていた。 明日から夏休みなため、皆んなどこか浮き足立っているように見える。

コンテストが終了してから真っ直ぐにこの場所へ来たため、皆の反応は知らないままだ。

批判されているのか、受け入れて貰えているのか。 分からないけれど、どちらでも構わないと思ってしまう。

白色のドレスを着たままジッと待っていれば、ようやく空き教室の扉が開かれる。 呼び出してまだ5分しか経っていないというのに、リアはすぐにやって来てくれたのだ。

「……優勝おめでとう」

10センチ近くあるヒールは履き慣れず、一歩を踏み出すのと同時によろけてしまう。 ステージ上で転倒せずに済んだのは、緊張で気を張っていたからだろう。

そのまま転びそうになっていれば、慌てて駆け寄って来たリアによって抱きしめられていた。

ヒールのおかげで身長差がないため、彼女のいじけたような表情がすぐ間近で見れる。

「……おもしろくない」 「どういうこと」 「自分でもよく分かんない…けどなんかモヤモヤした」 「似合ってないってこと?」 「ちがう!めっちゃ似合ってる……だから…なにこれイライラする…っ」

まるで子供のように抽象的な表現に、笑みを溢してしまう。

「意味わかんないんだけど」 「……だって今までは私だけのなつめちゃんっていうか…なつめちゃんが実は可愛いのは私だけが知ってたのに、もう皆んなにバレちゃったから」

今度はなつめの方から、彼女の体を優しく抱きしめる。 勇気を出して背中に腕を回して、励ますようにトントンと叩いた。

「……私は先に進んだよ」 「なつめちゃん……」 「雅はどうするの?」

僅かに挑発するように尋ねてみれば、リアが困ったように笑みを浮かべる。 彼女の方から力を込められて、更に体を密着させられていた。

「……本当、なつめちゃんには敵わないよ」

まるでチークキスをするように、二人の頬がピタリとくっついている。  ヒールを履いているため、いつもより顔の位置が近いからこそ出来るキスだ。

「……なつめちゃん見てるとさ、頑張りたくなっちゃったの」

頬が離れていって、今度は互いの額をくっ付け合う。 至近距離で互いを見つめ合いながら、近づいてくる唇に胸を高鳴らせた。

「……どんな時もなつめちゃんは味方でいてよ」 「雅こそ」

そっと目を瞑れば、唇にふわりとした感触が触れる。 暫く味わっていなかった感触に、体の奥底から熱が込み上げてくる。