第22話 (1/2)
その日も雅リアは空き教室に現れることはなく、教室で一度も声を掛けては来なかった。
日が空くほど、どんどん彼女との距離が遠ざかっていくようで、次第に焦り始めている自分がいる。
何に焦っているのか、どうして焦っているのか。 その答えが分からないからこそ、何とも言いようのない感覚に襲われているのだ。
帰りのホームルーム中、一枚のプリントが配られる。 ぼんやりと眺めていれば、一つの項目に目を見張る。
「来週の林間教室の班分けはこれでいくから」
2年生だけが参加する林間教室は一泊二日。 登山をして自然と触れ合うことが目的で、かなりキツイため、先輩たち曰く「最悪な行事」らしい。
近くの温泉施設で宿泊するため、それが唯一の癒しなのだ。 部屋割りと登山の際の班分けは一緒で、出席番号順に8人ずつで区切られて全部で5班に分けられていた。
春吹と雅という名字は同じ4班に分類されているため、一緒の部屋で寝泊まりするということになる。
「晴れていれば登山の予定だから、スニーカーとジャージ準備しておくように」 「雨降ったら?」 「勉強」 「どっちにしろ最悪かよ」 生徒の嘆きを無視して、要は済んだとばかりに担任教師がさっさと教室を後にする。 途端に室内は一気にざわざわして、林間教室への不満で溢れていた。
「登山とかダルいんだけど」 「まじで行きたくない」 「普通さ、海とかじゃないの?バーベキューとかのキラキラした青春は?」
そんな雑談には交わらず、さっさと教室を出て行くピンク髪。
人気者な彼女はいつも周りに人がいて、一人でいることは滅多にない。