第10話 (1/2)

クラス全員分のノートを一度に運べばかなりの重量で、これでは肩が凝ってしまうだろう。

頼まれて引き受けたは良いものの、なつめは運動神経は悪くないが握力はそこまで無いのだ。

肩をトントンと叩きながら空き教室の扉を開けば、やはりそこには雅リアの姿があった。

友達も沢山いるというのに、どうしてわざわざここに来るのかは結局謎のままだ。

真剣な表情でジッとスマートフォンの画面を見つめており、なつめが来たことも気づいていないようだった。

「……可愛い」

もしかしたら片想いの相手の画像でも見ているのだろうか。 散々振り回されたのだから、盗み見たとしても文句は言われないだろう。

忍足で側まで近づいて、背後からこっそりと画面を覗き込んだ。

「は…?」 「あ…やば」

低い声を漏らせば、リアが慌てたようにスマートフォンを両手で包込む。

彼女が熱心に見つめていたのは、中学時代のなつめの写真。 恐らく試合会場で盗撮した、ロングヘアでジャージ姿のなつめだった。

「何してんの」 「やっぱ可愛いなって」 「だからそれ消してってば!」 「やだよ、勿体ない」

込み上げる怒りを抑え込んで、これもチャンスだと彼女に向き直る。

今ここで写真を消してしまえば弱みはなくなるのだから、これから先雅リアに脅されることもなくなるのだ。

「スマホこっちに貸して!」 「嫌って言ってんじゃん」 「背伸びしないでよ、ずるい…!」

一生懸命背伸びをするが、リアの方が背が高いため届かない。 それでも必死に手を伸ばせば、無理な体制を取ったせいでバランスを崩して倒れ込んでしまっていた。

「いった…!」

倒れる際に巻き込んでしまったらしく、雅リアが痛そうに顔を歪める。

彼女がクッションになってくれたおかげで、なつめは殆ど痛みがなかった。