第6話 (1/1)
最近はマナー講座もダンスレッスンもお勉強もないから、暇だった。仕方ないからお父さん(仮)の書斎にある本でも読もうかな?と思ったけど、駄目だこれ。全然わかんない。 英語でも日本語でもないし、まったく私の専門外だった。
「あーヒマー」
そう言いながら足をばたつかせる遊びに興じてみるけど、やっぱりヒマだった。うーん、本当にやることがない。 一日がすっごい長く感じる。眠い時は寝られるからひまじゃないんだけど、起きてると凄いひま。
誰か話し相手になってくれないかなと思って、使用人さんとかお母さん(仮)とかレインボーな頭の妹(仮)に話しかけに行ったけど、みんなすぐに去ってっちゃった。 私と仲のいい厨房の皆様方と一緒に居るとお腹が空いて仕方がないので、あんまり頻繁に台所へ行くことはできない。
「…あ、そうだ」
外に出かけよう。
外に出かけるって言ったって一体何を?と思うかもしれないけど、たぶん虫取りとか素手でできるタイプにはそこそこ楽しいはずだ。もしかしたらクマさんと出くわすかもしれない。 レインボー妹(仮)が綺麗な鈴持ってたので、これはクマよけに持って行こう。
このおうちはそこそこひなびた場所にあるので、すぐそばに大自然が広がっている。緑は暴力。 山と林と森と、とにかく植物と動物がはびこっていて、ナチュラルって感じ。 今の時期は常緑樹以外見事な枯れ木だけど。
「うーんでもなぁ」
一人遊びの達人である私でさえ、野山に行ったところでカブトムシ採集とクマとの相撲くらいしかやることが思いつかない。でもカブトムシってこの時期には土の中で幼虫だか卵だかになってるんだよなあ。クマは冬眠してるんだっけ?
スマホがあったら一日潰れるのに。なんでないんだろう。失くしたっけ?そんな覚えないんだけどなあ。
ざくざくと茂みを割って、ときどき服についた虫を取ったり、木枯らしの寒さに震えたりした。防寒してきたつもりなのに風がコートを貫通してくる。
しばらく歩いていると、開けた場所に出た。
「未確認生物だ」
目の前で眠っている未確認生物は、たぶん「ドラゴン」というやつだ。
「死んでる?」
とりあえず、寄生虫とかヘンな病気を持ってたらよくないので、その辺で拾った木の枝でつついてみた。
「あ、生きてる」
ぐぉー、と力なくうなったドラゴン氏はどうやらまだ生きてるみたい。ふーん、ドラゴンの肉食べる機会がなくなって残念。でも火を通したところで死なないばい菌と寄生虫がいたら怖いし、食べなくて正解かも。