第14話 記憶の中身 (1/2)
思い出した、思い出せた。
「いくらミューズが何かをしたのだとしても、あのような事をするべきではなかった」自分の腕を縛るなり、部屋を出るなりすれば良かったんだ。
自制が効かなかった自分が悪い、そう結論づける。
身体の自由を奪う薬を飲ませたのはミューズだが、責める気はない。
彼女は始終謝っていたからだ。
抵抗もなく身を委ねてくれ、震えていた事が思い出される。
きっと怖かっただろう。
「しかし何でそんな事をミューズはしたんだ」経緯はわかったが、ミューズの気持ちはわからなかった。
ただ確実なのは責任を取らなければならないという事。
「やはり俺は王子には戻れない。未婚の女性に手を出して辱めてしまった。守るべき者を自ら傷つけてしまうなんて、許される事ではない」
「まさか、そんな事をティタン様がするわけがない」ルドは否定する。
「魔女の媚薬で理性を溶かされたんだから、抗えるわけないじゃない。だからティタン様は悪くないわ」魔女の言葉にティタンは眉を顰めた。
「あの飲み物に入っていたものか。おかしいとは思ったが……何故そのようなものをミューズに渡した」事件の一端を担う魔女に怒りがこみ上げる。
「ミューズ様が望んだ事よ。普通ならティタン様は絶対に手を出したりしないでしょうから、だからミューズ様はそれを飲ませたの。どうしても諦めきれず、最後に一度だけ繋がりが欲しかったそうよ」
「最後って、何がだ? もうすぐ婚約することも決まっていたのに」それを待てない程の何かだったのか?
「ティタン様の婚約者は自分ではないと言っていたけど? だから結ばれないのならいっそ、とだいぶ思い詰めてここに来たのよ」首を傾げる魔女を見て、血の気が引く。
凍える様な感覚に身体が震えた。
「何故、そんな事を?!」信じられない、ずっとミューズだけを想っていたのに。